犬を飼うときに、手作りご飯を与えるか、ドッグフードを与えるかについて迷う人もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では犬の手作りご飯のメリットとデメリットについて解説していきたいと思います。
基本的にはおすすめできない
手作りご飯では愛犬1匹に合わせた食いつきのよいフードを作ることができます。
しかし、手作りご飯には大きな時間と手間がかかり、栄養バランスを整えるのが難しく、給餌量がわかりにくいという欠点もあります。
そのため、愛犬に手作りご飯を与えるのは基本的におすすめしません。
そもそも手作りご飯って何?
まずは犬の手作りご飯とは、市販のものではなく、自分で作った犬用のフードのことです。
よくドッグフードと比較されます。
手作りご飯の8つのメリット
犬に手作りご飯には以下のようなメリットがあります。
①原材料を把握できる
ドッグフードのパッケージの原材料の欄を見て、その中に入っているすべての原材料を知っていることは少ないと思います。
特に添加物のような物質が入っていると心配になりますよね。
そして、知識がないとどの原材料がよいもので、どの原材料が粗悪なものなのかわからないと思います。
一方、手作りご飯の場合は自分で選んだ原材料を使い、ほぼ確実に添加物も含まれていません。
そのため、原材料を把握し、安心できるご飯を作ることができるのです。
②新鮮な食材を与えられる
ドッグフードの場合、どうしても作ってから私たちのところに届くまで時間がかかってしまいます。
一方、手作りご飯なら食材を購入してからご飯を作るまで数時間~数日で済みます。
そのため、愛犬に新鮮な、しかも旬の食材を与えることができます。
③愛犬に合わせたベストなフードを作れる
ドッグフードは平均的に対象とするすべての犬に合うように作られています。
たとえば、全年齢対応の場合はすべての犬種のすべての犬に適したフードになっています。
小型犬用、成犬用など、犬の体重やライフステージなどによりわかれていることもありますが、それ以上にわかれていることはあまりないでしょう。
一方、手作りご飯は愛犬1匹に合わせてカロリー、必要な栄養、好みの食材などを自由自在に組み合わせることができます。
そのため、愛犬に合わせたベストなフードを作ることができると言えます。
④ダイエットがしやすい
ドッグフードでダイエットをしようとすると、どうしても量を減らすことになってしまいます。
そして、その方法ではどうしても愛犬の満足感が減ってしまい、ストレスの原因になってしまうかもしれません。
一方、手作りご飯の場合、量を変えなくても野菜でかさ増しをするなどの方法で満足感を与えつつ、ダイエットをしてもらうことができます。
そのため、ドッグフードよりも手作りご飯のほうがダイエットはしやすいと言えるでしょう。
⑤食いつきがよい
手作りご飯では、ドッグフードと違い、新鮮な食材を使用し、さらに作りたてを与えることができます。
そして、水分も多く含まれているため、犬の本来の食生活に近くなっています。
そのため、ドッグフードよりも、手作りご飯のほうが食いつきはよいことが多いでしょう。
⑥食材から水分をとれる
ドッグフードの中で一番一般的な種類であるドライフードの場合、含まれる水分は10%程度になっており、必要な水分のうち多くは水からとることになります。
一方、手作りご飯の場合には食材に多くの水分が含まれています。たとえば、野菜の多くは70~90%が水分ですし、肉も70%程度は水分です。
そのため、犬の本来の食生活に近く、水をあまり飲まない犬でも自然に水分補給をさせてあげることができます。
⑦添加物フリー
ドッグフードの中には添加物が含まれているものが多いですが、手作りご飯の場合には、ほとんどの場合、添加物は含まれていません。
そのため、添加物の摂取がひとつの原因と考えられている涙やけやアレルギーなどの症状が改善する場合があります。
ただ、涙やけにはほかの原因もありますし、アレルギー症状はふつうに特定の食物に対して出ている場合もあります。
そのため、必ず改善できるわけではありません。
⑧消化によい
ドッグフードは栄養バランスがとても優れていますが、さまざまな原材料を加熱して製造しており、成分の変性が起こっている場合があります。
また、手作りご飯の場合より水分の摂取量は少なくなります。
そのため、ドッグフードより手作りご飯のほうが消化にはよくなっていると言われています。
そして、消化性がよくなると同じ栄養成分のフードよりも体内に吸収される栄養の量が多くなり、消化に必要なエネルギーも節約することができます。
そのため、手作りご飯のほうが効率よく栄養がとれると言えます。
手作りご飯の8つのデメリット
①栄養の調整が難しい
人と犬はどちらも雑食動物なので、必要な栄養に関しては共通している部分も多くあります。
ただ、犬は肉食寄りの雑食動物なので、人間の栄養と異なる部分もあります。
具体的には、必要な栄養素はほとんど同じですが割合は異なり、カルシウムについては人間よりかなりの量を必要としています。
また、犬は人間より多くのタンパク質を必要としており、炭水化物の重要性は人間より低くなっています。
そのため、人間のご飯と同じような気持ちで犬に手作りご飯を与えてしまうと、一部の栄養が足りなくなったり、過剰になったりしてかえって犬の体調に悪影響を与えてしまうかもしれません。
また、犬は本来肉食動物だったから生肉だけを与える、という方法も危険です。犬は肉食寄りとはいえ雑食動物なので、生肉だけを与え続けてしまうと犬が本来必要としていて、食事から摂取する必要があるビタミン、ミネラルなどが不足してしまいます。
そして、脂肪をとりすぎてしまい肥満になってしまう、食物繊維が不足して下痢になってしまう、などの事態を招く可能性があります。
このような事態を防ぐため、犬に手作りご飯を与えるなら、きちんと犬の栄養学を学び、それを実践できなければなりません。
一方、ドッグフードの総合栄養食は完全栄養食であり、これと水があれば犬に必要な栄養はすべてとれるようになっています。
そのため、栄養が偏って愛犬の体調が悪くなってしまうリスクは手作りご飯のほうが圧倒的に高くなっているのです。
②ドッグフードを食べなくなるかも
犬はふだんとは異なる食べ物を警戒する傾向があります。
そのため、ドライフードの中でさえ、いつもとは異なるものを与えると警戒して食べてくれない場合があります。
そして、手作りご飯とドッグフードではニオイも食感も味も大きく異なります。
そのため、手作りご飯を与え続けてしまうと、ドッグフードを食べてくれなくなるかもしれません。
これに対しては、ドッグフードに戻すつもりはないから問題ないと答える人もいるかもしれません。
しかし、話はそう単純ではありません。
飼い主が何らかの用で不在のとき、入院などで家にいられないとき、災害のときなどは犬に手作りご飯を作ってあげることができません。
そんなときに犬がドッグフードを食べてくれないと、栄養がとれなくなってしまい、愛犬の命が危険にさらされてしまうことになります。
このような理由から、完全に手作りご飯にしてしまうのは大きなリスクがあります。
そのため、手作りご飯を与えたいという場合でも、完全に手作りご飯にするのではなく、ドッグフードと半分づつ与えるのをおすすめします。
そうすればドッグフードも手作りご飯も食べてくれるようになることでしょう。
③コストが高い
手作りご飯にしたいという人の多くは、ドッグフードに含まれている添加物を避け、愛犬の健康や安全を守りたいと考えているのではないでしょうか。
しかし、その考えをもとに食材を選んでいってしまうとかなりコストがかかってしまいます。
これはドッグフードでも生の食材でも同じですが、添加物や農薬などの薬品を多く使用している製品は安く、これらを使用していない製品は高くなる傾向があります。
手作りご飯の食材の場合、無添加のものや無農薬のものなどを選んでいってしまうと、どうしても価格は高くなってしまいます。
ひょっとしたら人間の食べ物よりも高くなってしまうかもしれません。
そして、そんな高価な手作りご飯を与えるくらいなら、無添加で安心できる原材料を用いているドッグフードを与えたほうが経済的な可能性もあります。
④手間がかかる
ドッグフードなら買ってきたものをそのままお皿に入れ、食後にお皿を洗うだけで大丈夫です。
一方、手作りご飯の場合には多くの手間がかかってしまいます。
具体的には、まずメニューを考え、食材を購入します。そして、それをもとにフードを作り、お皿に盛り付けます。それから食べ終わった後は洗い物を行います。
このような大きな手間を1日2食分かけられるかどうかは考える必要があります。
しかも、これを365日途切れることなく行わなくてはいけないのです。
⑤アレルギーのリスク
これは手作りご飯だけではなくドッグフードにも言えることですが、犬の体質や体調により、どんな食材でもアレルゲンになってしまう可能性はゼロではありません。
ちなみに、アレルギーは先天的に出る場合もありますが、1つの食材を長期間摂取しすぎたために起こることもあります。
そして、手作りご飯はドッグフードと比べて1種類の食材を多く摂取することが多くなると考えられます。そのため、ドッグフードよりもさらに注意が必要です。
はじめて食べる食材の場合には、少しずつ食べさせて様子をみてあげる必要があります。
⑥給餌量がわかりにくい
ドッグフードの場合、給餌量はパッケージに書いてあり、明確です。
一方、手作りご飯の場合、フードのカロリーを計算し、愛犬に適した量を与えるのは難しく、手間がかかることでもあります。
そして、与える量が多すぎると太ってしまいますし、少なすぎるとやせてきてしまいます。
そのため、ドッグフードよりも給餌量には注意する必要があります。
⑦保存しにくい
ドッグフードの中でもっとも一般的なドライフードの場合、一般的には未開封で半年~2年ほどの賞味期限があります。また、開封後の場合でも1~3ヶ月程度持つことが多いでしょう。
一方、手作りご飯の場合にはそうも行きません。
手作りご飯はその日のうちに食べきってしまうことが望ましいですし、最悪でも翌日には食べきる必要があります。
ただ、手作りご飯の場合には一応、冷凍保存するという方法があります。
ただ、その場合でも雑菌やカビの繁殖には注意する必要があります。
そして、愛犬が食べ残したものは必ず廃棄するようにしましょう。もったいないからといって保存してしまうと、すぐに雑菌やカビが繁殖してしまいます。
⑧歯垢がつきやすい
手作りご飯にはドライフードと比べて歯垢が付きやすいというデメリットもあります。
ドライフードの場合には含まれている水分の量が少ないので歯につきにくいのですが、手作りご飯は水分が多く、食べ物が歯にくっついてしまうことが多くあります。
そして、歯に歯垢がくっついてしまうと虫歯や歯周病などになってしまう可能性が高くなってしまいます。
そのため、こまめな歯のチェックや歯磨きなどが必要になってきます。
完全な手作りにする前に検討すべきこと
この項では、完全な手作りご飯にする前に検討すべきことについて解説していきたいと思います。
ドライフードからウェットフードに変える
ドライフードは水分が10%以下程度しか含まれていないドッグフードですが、ウェットフードは水分が75%程度含まれていて、犬の本来の食事に近いドッグフードになっています。
そして、ウェットフードにはドライフードに比べて食いつきがよいというメリットがあります。そのため、ドライフードは食べない犬でも、ウェットフードなら食べてくれることがあります。
ただ、ウェットフードには水分が多く含まれているため腐りやすく、腐敗を防ぐために保存料などの添加物が含まれていることが多くあります。
そのため、愛犬に添加物を食べさせたくないという場合には向いていないかもしれません。
しかし、そんな人のために価格は比較的高いものの、過剰な添加物を排除したウェットフードも発売されています。
食いつきの改善のために手作りご飯を検討している人は、ウェットフードも検討してみてはいかがでしょうか。
トッピングを加えてみる
ドライフードを食べてくれない場合でも、トッピングを加えてあげると食べてくれる場合があります。
そして、犬用に食いつきを高めるためのトッピングもたくさん発売されています。
そのため、トッピングを加えてあげるのもおすすめです。
ただ、トッピングはかけすぎると栄養が偏ってしまうため、少量に留める必要があります。
そして、ずっと同じトッピングを使っていると犬が慣れて飽きてきてしまい、食べてくれなくなってしまう可能性もあります。
かといって、トッピングを増やしすぎてしまうと栄養が偏り、肥満などの原因になってしまいます。
そんなときのために、トッピングは数種類用意しておくことをおすすめします。複数あれば飽きにくくなるからです。
また、単に食いつきを改善するためだけならぬるま湯でふやかしてあげるだけで食べてくれることもあります。
なぜなら、ふやかすとニオイが増し、犬にとってよりおいしそうに感じられるからです。
プレミックス・ドッグフードを与えてみる
プレミックスドッグフードとは、手作りドッグフードの素のようなもので、これに肉や魚やオイルを加えるだけで手作りフードを作ることができます。
手作りなのにもかかわらず、簡単に栄養バランスの整ったドッグフードを作ることができるのが特徴です。
ただ、添加物は含まれている場合があるので注意が必要です。
しかし、これには大きな時間と手間がかかり、栄養バランスを整えるのが難しく、給餌量がわかりにくいという欠点もあります。
そのため、愛犬に手作りご飯を与えるのは基本的におすすめしません。